宇宙ゴミを捕まえ、人工衛星を点検し、寿命まで延ばす。
アストロスケールの事業には、大きな夢があります。
世界中で人工衛星の打ち上げが増えれば、軌道上の点検・整備・除去サービスは必要になるはず。
話を聞けば聞くほど、
「これから伸びる宇宙産業の本命かもしれない!」
と期待したくなります。
しかし、株式市場ではアストロスケールのような企業を「夢枠」と表現することがあります。
将来性は大きい。
技術も面白い。
受注残も積み上がっている。
それでも、現在は大幅な赤字です。
🐥「宇宙ゴミが増えれば、お仕事もいっぱい増えるんじゃないの?」
まろぴー「増える可能性はあるよ。でも、お仕事が増えることと会社が黒字になることは別なのです!」
まろぴーもアストロスケールの未来には期待しています。
だからこそ心配なのが、
10年後も「いつか儲かる夢の会社」のままではないか?
ということ。
今回は2027年4月期第1四半期の最新決算をもとに、受注残363億円でも赤字が続く理由と、アストロスケールが「夢枠」を卒業するために必要な条件を考えます。
まず結論:黒字化はまだ近くない
最初に結論から。
アストロスケールの黒字化は、少なくとも直近の2027年4月期には予定されていません。
会社が公表している通期予想は次のとおりです。
| 項目 | 2026年4月期実績 | 2027年4月期予想 |
|---|---|---|
| プロジェクト収益 | 約115億円 | 125億~170億円 |
| 売上収益 | 約59億円 | 70億~90億円 |
| 営業損益 | 約100億円の赤字 | 90億~99億円の赤字 |
プロジェクト収益は最大で約48%増える予想です。
それでも営業損失は90億円以上残ります。
つまり、現在はまだ、
売上が少し伸びれば黒字になる段階ではない
ということです。
衛星の開発、製造、試験、打ち上げ、宇宙空間での運用には多額の費用が必要です。
世界各国に拠点を持ち、複数のミッションを同時に進めているため、研究開発費や人件費も重くなります。
最新1Qも約27.5億円の営業赤字
2027年4月期第1四半期の実績を確認します。
| 項目 | 2027年4月期1Q |
|---|---|
| 売上収益 | 約12億円 |
| 政府補助金収入 | 約8億円 |
| プロジェクト収益 | 約20億円 |
| 売上総利益 | 約0.7億円 |
| 営業損益 | 約27.5億円の赤字 |
| 当期損益 | 約30.7億円の赤字 |
売上収益は約12億円。
政府補助金収入を加えたプロジェクト収益は約20億円でした。
一方、営業損失は約27.5億円です。
会社は、一部プロジェクトで部材調達や打ち上げ契約のタイミングがずれ、収益の認識が後ろ倒しになったと説明しています。
プロジェクト自体に重大な問題が起きたという説明ではありません。
ただし、ここで注意したいのは、
宇宙企業では「少し遅れただけ」が決算数字へ大きく表れやすい
ということです。
売上を計上する時期が数か月ずれるだけで、四半期の進捗率や赤字額が大きく変わります。
受注残363億円もあるのに、なぜ赤字なの?
アストロスケールには約363億円の受注残高があります。
現在の年間売上と比べれば、とても大きな金額です。
🐥「363億円も注文があるなら、もう安心じゃないの?」
まろぴー「その363億円が、明日まとめて売上になるわけじゃないんだよ!」
宇宙関連のプロジェクトは、契約から完了までに何年もかかる場合があります。
契約を取ったあとも、
- 衛星を設計する
- 部品を調達する
- 組み立てる
- 地上で試験する
- ロケットを確保する
- 打ち上げる
- 宇宙空間で運用する
という長い工程があります。
売上はプロジェクトの進行に合わせて少しずつ計上されます。
受注残は将来の売上候補ですが、今期の利益を保証するものではありません。
363億円すべてが契約済みではない
受注残高の中身にも注意が必要です。
2026年7月末時点の内訳は、
- 受注済み残高:約258億円
- 受注内定済み案件:約105億円
- 合計:約363億円
となっています。
約105億円分には、現時点では未受注でも、競合が存在しない後続フェーズなど、会社が受注を期待している金額が含まれています。
そのため、
受注残363億円=363億円すべて契約済み
ではありません。
受注残を見るときは、合計額だけでなく、
- 契約済みはいくらか
- 内定・見込みはいくらか
- 何年かけて売上になるのか
- 顧客が費用をどこまで負担するのか
まで確認する必要があります。
【9月30日追記】英国国防省から約31億円の新規防衛案件を獲得!
アストロスケールに新たな大型材料が出ました。
2026年9月30日、アストロスケールホールディングスは、英国の連結子会社 Astroscale Ltd が英国国防省から新規防衛案件を受注したと発表しました。
今回の契約概要はこちら。
- 契約先:英国国防省
- 契約金額:1,500万ポンド
- 円換算:約31.2億円
- 契約期間:複数年
- サービス内容:非開示
- 2027年4月期の業績予想:現時点では未織り込み
- 業績への影響:現在精査中
サービスの具体的な内容は防衛案件ということもあり非開示ですが、約31億円という契約規模は注目したいところです。
また、収益は複数年度にわたって計上される予定のため、31億円が一気に今期売上へ乗るわけではありません。
それでも重要なのは、アストロスケールの技術が「宇宙ゴミ除去」だけではなく、防衛・安全保障分野でも実際の契約につながり始めていることだと、まろぴーは見ています。
防衛分野の受注が「単発」ではなくなってきた
今回の英国案件だけを見ると「新しく31億円を受注した」というニュースですが、これまでの流れを見ると印象が変わります。
アストロスケールは日本でも、防衛省から「軌道上での自国衛星の監視・防御技術に関する研究」に関する契約を獲得しています。
さらに英国では、英国国防省が主導する「Orpheusミッション」にも関与。
Orpheusでは、宇宙領域認識(SDA)や情報・監視・偵察(ISR)につながる技術開発が進められています。
つまり、
デブリ除去
↓
衛星への接近・観測
↓
衛星の捕獲・把持
↓
宇宙領域の監視
↓
防衛・安全保障
という形で、アストロスケールが持つ軌道上サービス技術の用途が広がっているわけです。
ここは中長期でかなり重要なポイントになりそうです。
「宇宙×防衛」が新しい収益源になるか
アストロスケールはもともと、
- ADR:既存デブリ除去
- EOL:運用終了衛星の除去
- ISSA:宇宙空間での観測・点検
- LEX:衛星寿命延長
などの軌道上サービスを展開しています。
これらに共通して必要なのが、対象物へ安全に接近し、状態を把握し、必要に応じて捕獲・操作する技術です。
この技術は民間衛星だけでなく、防衛分野との親和性も非常に高い。
実際、日本・英国・米国などで政府・防衛関連の案件獲得が進んでおり、アストロスケールを見るうえで「スペースデブリ関連企業」という括りだけでは足りなくなってきました。
今後は、
「軌道上サービス × 宇宙安全保障」
という視点も重要になりそうです。
株価も反応。前場は5%超上昇
9月30日の株式市場でも今回の材料は好感され、アストロスケールHD(186A)は前場を**1,262円、前日比+67円(+5.61%)**で終えました。
ただし、今回の31.2億円は複数年度にわたる契約です。
そのため、
「31億円受注=今期利益が一気に31億円増える」
という話ではありません。
ここは注意が必要です。
今後確認したいのは、
① 2027年4月期業績への具体的な影響
② 防衛案件の追加受注
③ 英国以外への横展開
④ 防衛案件が継続的な収益源へ育つか
このあたり。
今回の受注そのものも大きな材料ですが、まろぴーがより注目しているのは、防衛案件の「点」が少しずつ「線」になってきていることです。
宇宙ゴミ除去のアストロスケールから、宇宙空間のインフラ・安全保障を支える企業へ。
この変化が今後の業績にどこまで表れてくるのか、引き続き追いかけたいと思います🐥📈
↑ここまで9/30追記記事
↓ここから元記事
「売上収益」と「プロジェクト収益」は何が違う?
アストロスケールの決算では、「売上収益」と「プロジェクト収益」という2つの数字が登場します。
少し分かりにくいところです。
売上収益
会計基準に基づいて計上される、通常の売上です。
プロジェクト収益
売上収益に、特定のプロジェクトに関連する政府補助金収入を加えた、会社独自の管理指標です。
2027年4月期1Qでは、
- 売上収益:約12億円
- 政府補助金収入:約8億円
- プロジェクト収益:約20億円
となっています。
🐥「プロジェクト収益20億円が、そのまま普通の売上じゃないの?」
まろぴー「そうなの。約8億円は政府補助金収入だから、分けて見ようね!」
政府の支援を受けながら技術開発を進められることは、アストロスケールの強みです。
一方、将来「自力で稼げる会社」になったかを判断するには、売上収益と民間顧客からの継続収入がどこまで増えたかを見る必要があります。
黒字化への明るい変化① 全額拠出案件が94%に
現在のアストロスケールには、黒字化へ向けた良い変化もあります。
そのひとつが、全額拠出案件比率の上昇です。
全額拠出案件とは、アストロスケールが顧客へ提案した範囲の費用を、顧客側が全額負担する案件です。
受注残高に占める全額拠出案件の比率は、
- 2024年4月:11%
- 2025年4月:80%
- 2026年4月:89%
- 2026年7月:94%
まで上昇しました。
これはとても重要です。
技術を証明するために自社資金を大量投入する段階から、
お客さんがお金を払って、アストロスケールの技術を利用する段階
へ移り始めているからです。
🐥「今までは自腹で夢を作っていたけど、だんだんお仕事になってきた?」
まろぴー「そう!“すごい実験”から“お金をもらえる事業”へ変わる途中なんだよ」
この比率が高いまま、受注残と売上が伸びるなら、黒字化へ一歩近づきます。
黒字化への明るい変化② 案件期間が短くなっている
受注してから収益へ変わるまでの期間も短くなっています。
会社が公表した平均案件期間は、
- 2024年4月:4.1年
- 2025年4月:4.0年
- 2026年4月:3.6年
- 2026年7月:2.6年
へ短縮しました。
受注残がどれだけ多くても、売上になるまで10年かかれば、会社はその間も人件費や開発費を払い続けなければなりません。
案件期間が短くなれば、受注残をより早くプロジェクト収益へ変えられる可能性があります。
ただし、衛星の打ち上げ延期や顧客都合でスケジュールが変わることもあります。
「平均2.6年だから、必ず2.6年で売上になる」という数字ではありません。
黒字化への明るい変化③ 単発から継続課金へ
アストロスケールが黒字化するうえで、特に重要だと考えられるのが民間向けの寿命延長サービスです。
現在は、政府から受注した開発・実証案件が中心です。
政府案件は1件当たりの金額が大きい反面、入札に負ければ受注できず、売上も年度によってばらつきます。
一方、衛星寿命延長サービス「LEXI」が実用化されれば、運用中の衛星へ継続的なサービスを提供できます。
会社は、運用中のLEXI衛星1機につき、年間1,000万~1,500万ドル程度の寿命延長料を想定しています。
仮に複数の衛星が稼働し、複数年契約を獲得できれば、売上の予測がしやすくなります。
これは、
衛星を開発して終わりではなく、宇宙で働かせながら利用料を受け取るモデル
です。
まろぴーが考える「夢枠卒業」の最大のポイントは、この継続収入が本当に立ち上がるかどうかです。
でも、黒字化にはまだ大きな壁がある
良い変化はありますが、黒字化までの壁はまだ高いと考えます。
壁① 売上規模が足りない
2027年4月期の売上収益予想は70億~90億円。
それに対し、営業損失予想は90億~99億円です。
現在の費用構造のままでは、売上が少し増えただけで黒字になる状況ではありません。
黒字化には、
- 売上規模をさらに大きくする
- 粗利益率を改善する
- 開発した技術を複数案件で再利用する
- 販売管理費の伸びを抑える
ことが必要です。
ただし、公開されている数字だけで「売上○億円になれば黒字」と正確に計算することはできません。
プロジェクトごとの採算や、将来のサービス原価がまだ見えないからです。
壁② 打ち上げと実証に失敗できない
地上のサービスと違い、宇宙へ打ち上げた衛星は簡単に修理できません。
ロケットの打ち上げ延期や失敗、衛星の故障、ドッキングの失敗が起きれば、収益化が遅れる可能性があります。
技術的な成功が、そのまま会社の信用と次の受注につながる事業です。
壁③ 入札に勝ち続ける必要がある
アストロスケールは、英国宇宙庁の宇宙ゴミ除去プロジェクト「COSMIC」を初期段階から進めていました。
しかし、2026年8月のフェーズ3入札では別の事業者が選ばれました。
会社は今期の業績予想に織り込んでいなかったため、通期予想への影響はないとしています。
それでも、技術実証で先行していても、すべての大型案件を獲得できるわけではないことが分かります。
壁④ 資金調達と株式の希薄化
アストロスケールは2026年6月に306億円を調達し、7月末の現金及び現金同等物は約349億円まで増えました。
開発を継続するための資金は大きく増えています。
一方、調達には普通株式だけでなく、転換社債も含まれています。
転換社債が将来株式へ転換されれば、発行済み株式数が増え、1株当たりの価値が薄まる可能性があります。
🐥「お金が増えたなら安心じゃないの?」
まろぴー「会社は安心に近づくけど、株主は“どうやって増やしたお金か”も見ないとね」
現金349億円で何年耐えられる?
単純計算をしたくなりますが、正確な残り年数は出せません。
2027年4月期1Qのフリーキャッシュフローは約42億円のマイナスでした。
仮に毎四半期同じペースで現金が減るなら、年間では約169億円になります。
ただし、宇宙関連企業のキャッシュフローは四半期によって大きく変動します。
- 顧客からの入金時期
- 補助金の受け取り
- 衛星製造費
- 打ち上げ費用
- 新規契約
- 追加の資金調達
によって変わるため、
現金349億円÷直近の減少額=残り寿命
とは単純に計算できません。
それでも、今後は現金残高とフリーキャッシュフローを毎四半期確認する必要があります。
赤字額だけでなく、「あとどれくらい自力で開発を続けられるか」を見るためです。
宇宙市場が伸びれば、自然に黒字になるの?
宇宙市場の成長は追い風です。
SpaceXなどによってロケットの打ち上げが増え、宇宙を利用する国や企業が増えれば、軌道上の点検・延命・除去も必要になります。
SpaceXとアストロスケールの違いと関係性は、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ SpaceXが伸びるほどアストロスケールに追い風?2社の違いと宇宙ゴミ市場を徹底解説
ただし、市場が拡大することと、アストロスケールが利益を出すことは別です。
市場が大きくなっても、
- 競合企業に案件を取られる
- 価格競争が起きる
- 実証から商用化へ進めない
- 開発費が売上以上に増える
可能性があります。
投資では「宇宙ゴミが増えるから上がる」という一言で終わらせず、売上と利益への変化を確認したいところです。
まろぴーが考える「夢枠卒業」の5条件
アストロスケールが夢枠を卒業したと判断するために、まろぴーは次の5つを追いかけます。
1.売上収益が継続的に増える
政府補助金を含むプロジェクト収益だけでなく、会計上の売上収益が成長しているか。
2.売上総利益率が改善する
売上が増えても、原価が同じように増えれば黒字化できません。
衛星やソフトウェアを複数案件で共通化し、利益率を上げられるかが重要です。
3.営業赤字が縮小する
「今期も赤字だけど成長している」ではなく、営業損失が実際に減り始めるか。
4.民間の継続収入が立ち上がる
LEXIなどの寿命延長サービスで、毎年利用料を得られる状態を作れるか。
5.追加の大型増資に頼らず成長できる
顧客からの入金と事業収入で開発費をまかなえるようになるか。
この5つがそろい始めたとき、アストロスケールは「将来すごいかもしれない会社」から、
宇宙で実際に稼ぐ会社
へ変わっていくと考えます。
10年後も夢枠なのか?
アストロスケールの事業は、まだ市場そのものを作っている途中です。
宇宙ゴミ除去や衛星寿命延長が、当たり前に利用されるサービスになるまでには時間がかかります。
そのため、短期間で安定黒字企業へ変わると考えるのは早いでしょう。
一方で、すべてが夢のままというわけでもありません。
- 大型デブリへの接近実証に成功
- 約363億円の受注残高
- 全額拠出案件比率94%
- 平均案件期間の短縮
- 欧州で新たな軌道離脱案件を獲得
- 複数の衛星を打ち上げる計画
- 約349億円の現金を確保
と、事業化へ向けた変化は進んでいます。
🐥「じゃあ、もう夢枠じゃない?」
まろぴー「まだ夢枠。でも、夢を実証して、お客さんからお金をもらう段階には進んできたよ!」
大切なのは、夢が大きいかどうかではありません。
その夢が毎年、
受注、売上、粗利益、継続収入、営業赤字の縮小
へ変わっているかです。
まとめ:夢を数字に変えられるかを見届けたい
アストロスケールの黒字化は、まだ近いとは言えません。
2027年4月期も90億~99億円の営業赤字が予想されています。
受注残が約363億円あっても、売上への転換には時間がかかり、そのすべてが契約済みというわけでもありません。
一方で、顧客が費用を全額負担する案件は94%まで増え、案件期間も短くなっています。
実証中心の会社から、顧客がお金を払う軌道上サービス会社へ移ろうとしていることは確かです。
10年後も夢枠のままなのか。
それとも、宇宙の点検・延命・除去で継続的に利益を出す会社になるのか。
まろぴーが注目したいのは、派手な宇宙ニュースだけではありません。
営業赤字が縮小し、民間の継続収入が立ち上がる瞬間。
そこが、アストロスケールが本当の意味で「夢枠」を卒業するタイミングなのだと思います。
※本記事は公開資料をもとに筆者個人の見解をまとめたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績予想や受注見込みには不確実性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
📣 9月11日に発表された最新決算では、営業赤字が約27.5億円へ拡大しました。
それでも決算後の株価は、一時971円まで売られたあとに切り返し、1,020円のプラス引けとなっています📈
🐣まろぴー
「赤字拡大なのに、どうして株価は買い戻されたの?」
今回の決算内容と、受注残363億円、現預金349億円を市場がどう評価したのかは、こちらの記事で詳しくまとめています👇
👉 アストロスケール決算は赤字拡大!それでも株価はプラス引け?受注残363億円をまろぴーが確認!



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