SpaceXが伸びるほどアストロスケールに追い風?2社の違いと宇宙ゴミ市場を徹底解説

企業深掘

ロケットを何度も打ち上げ、巨大な衛星通信網「Starlink」を広げるSpaceX。

宇宙へ飛び立つロケットや人工衛星が増えていくニュースを見ると、こんな疑問が浮かびます。

宇宙が混雑するほど、宇宙ゴミを除去するアストロスケールの仕事も増えるのでは?

🐥「SpaceXが宇宙にどんどん運んで、アストロスケールがお掃除するの?」

まろぴー「イメージは近いけど、アストロスケールは“宇宙のお掃除屋さん”だけじゃないよ!」

SpaceXとアストロスケールは、どちらも宇宙関連企業です。

しかし、現在の主な事業は大きく異なります。

SpaceXは宇宙へ運ぶ会社。

アストロスケールは、宇宙へ到着したあとの人工衛星を点検・延命し、役目を終えた衛星や宇宙ゴミを安全に除去する会社です。

今回は2社の違いと関係性、そしてアストロスケールが将来どのように利益を出そうとしているのかを、最新決算も交えて深掘りします。

SpaceXとアストロスケールは競合なの?

結論からいうと、現在のSpaceXとアストロスケールは、基本的には直接の競合ではありません。

会社主な役割たとえるなら
SpaceXロケット、宇宙船、衛星通信宇宙へ向かう鉄道・運送会社
アストロスケール衛星の点検・延命・除去宇宙の整備会社・レッカー・清掃会社

SpaceXは、Falcon 9やStarshipといったロケットを開発し、人や人工衛星、物資を宇宙へ運びます。Starshipは100トンを超える物資を軌道へ運べる完全再使用型システムを目指して開発されています。SpaceX公式サイト

一方、アストロスケールが得意としているのは、すでに宇宙空間にある物体へ接近する技術です。

  • 人工衛星へ近づく
  • 衛星の状態を調べる
  • ドッキングする
  • 燃料補給や寿命延長を行う
  • 動かなくなった衛星を軌道から外す
  • 大型の宇宙ゴミを捕獲して除去する

アストロスケールは、これらをまとめて「軌道上サービス」として展開しています。アストロスケール公式サイト

🐥「SpaceXが宅配便で、アストロスケールが宇宙のJAFみたいな感じ?」

まろぴー「そうそう!しかも点検、修理、レッカー、お片づけまで狙っているのです!」

SpaceXとアストロスケールに直接の関係はある?

ここは誤解しやすいところです。

現時点の公式発表を確認した限りでは、SpaceXがアストロスケールの主要顧客になっている、または両社が大型提携を結んでいるという事実は確認できません。

アストロスケールが公表している主な顧客や関係機関には、

  • JAXA
  • 欧州宇宙機関(ESA)
  • 英国宇宙庁
  • 米国宇宙軍
  • フランス国立宇宙研究センター
  • Eutelsat OneWeb

などが並んでいます。

最新の大型デブリ除去ミッション「ADRAS-J2」についても、打ち上げにはSpaceXではなく、欧州のIsar Aerospaceが開発するSpectrumロケットを利用する計画です。2027年4月期1Q決算説明資料

したがって、

SpaceXが儲かると、アストロスケールへ直接お金が入る

という関係ではありません。

「SpaceX関連銘柄」という表現も、現時点では少し無理があります。

それでもSpaceXの成長が追い風になる理由

直接の取引関係がなくても、SpaceXの成長がアストロスケールにとって間接的な追い風になる可能性はあります。

SpaceXによってロケットの打ち上げが活発になり、宇宙利用へ参入する企業や国が増えれば、軌道上を飛ぶ人工衛星も増えていきます。

人工衛星が増えれば、必要になるのは打ち上げだけではありません。

  • 衛星同士の衝突を避ける
  • 故障した衛星の状態を確認する
  • 燃料切れの衛星を延命する
  • 寿命を迎えた衛星を軌道から外す
  • 制御不能になった物体を除去する

こうした「打ち上げたあとの仕事」が増えていきます。

つまりSpaceXは、アストロスケールへ直接仕事を発注する会社というより、

宇宙へ運ぶ量を増やし、軌道上サービスが必要になる市場そのものを大きくする存在

と考えたほうが自然です。

🐥「宇宙へ行く人が増えたら、宇宙の道路整備も必要になるんだね!」

まろぴー「そう!ロケットだけ増えても、軌道が危険になったら困っちゃうからね」

アストロスケールは宇宙ゴミをどうやって捕まえる?

宇宙ゴミの除去と聞くと、大きな網ですくうような姿を想像するかもしれません。

しかし実際には、地球の周りを高速で移動する物体へ接近し、動きや回転を合わせなければなりません。

相手が通信可能な人工衛星なら、位置情報を受け取ることもできます。

難しいのは、通信できず、制御もできない「非協力物体」です。

アストロスケールのADRAS-Jは、宇宙を漂う日本のロケット上段へ接近し、約15メートルの距離まで近づいて観測しました。

次のADRAS-J2では、その大型デブリを実際に捕獲し、軌道から離脱させる計画です。

対象は、全長約11メートル、直径約4メートル、重量約3トン。

🐥「3トンの宇宙ゴミに近づくの!?ぶつかったら大変!」

まろぴー「だから“ただ捕まえる”より、相手の位置や回転を読みながら安全に近づく技術が重要なんだよ」

この接近・近傍運用技術は、宇宙ゴミ除去だけでなく、衛星の点検や燃料補給、寿命延長にも応用できます。

アストロスケールは何で稼ぐ会社なの?

アストロスケールの将来の収益源は、大きく3つに分けられます。

1.政府・宇宙機関から受注する

現在の中心は、各国政府や宇宙機関から受注する実証・開発プロジェクトです。

宇宙ゴミ除去はまだ新しい市場なので、最初から民間企業だけで採算を取るのは簡単ではありません。

まず政府資金による実証で技術と運用実績を積み上げ、その後の本格的な除去サービスにつなげます。

2.防衛関連の衛星を点検・保護する

宇宙は、通信や測位だけでなく、安全保障でも重要な領域になっています。

正体不明の物体へ接近して状態を確認する技術や、重要な衛星を点検・保護する技術は、防衛分野でも需要があります。

最新の決算資料では、英国で宇宙防衛に関する政策の具体化や予算配分が進んでおり、事業機会が拡大していると説明されています。

3.民間衛星を延命する

将来的に特に注目したいのが、人工衛星の寿命延長サービスです。

衛星はまだ機器が正常でも、軌道を維持する燃料がなくなると運用を続けられません。

そこでアストロスケールの衛星が接近・ドッキングし、軌道維持を手伝います。

新しい大型衛星へ交換するよりも、現在の衛星を数年間延命したほうが安ければ、民間企業にも利用するメリットがあります。

アストロスケールは、運用中のLEXI衛星について、顧客から1機当たり年間1,000万~1,500万ドル程度の寿命延長料を得るモデルを想定しています。

このサービスが実現すれば、単発の開発受注だけでなく、継続的なサービス収入へ近づきます。

最新決算はどうだった?

2027年4月期第1四半期の数字だけを見ると、まだ安心できる決算ではありません。

項目2027年4月期1Q
売上収益約12億円
政府補助金収入約8億円
プロジェクト収益約20億円
営業損失約27.5億円
現金及び現金同等物約349億円
受注残高約363億円

プロジェクト収益は前年同期比で減少し、営業損失は約27.5億円。

会社は、部材調達や打ち上げ契約のタイミングによって、一部プロジェクトの収益認識が後ろへずれたことが主因だと説明しています。

売上総利益は約7,200万円の黒字を維持しましたが、研究開発費や販売管理費を吸収するには、まだ売上規模が足りません。

🐥「受注がいっぱいあるのに、どうして赤字なの?」

まろぴー「宇宙のお仕事は、契約した瞬間に全部が売上になるわけじゃないの!」

衛星の設計、製造、試験、打ち上げ、軌道上での運用には長い時間がかかります。

受注残は将来の売上候補ですが、売上と利益へ変わるまでに数年かかる案件もあります。

受注残363億円は、そのまま確定売上ではない

受注残高は約363億円あります。

ただし、内訳を見ることが重要です。

  • 受注済み残高:約258億円
  • 受注内定済み案件:約105億円
  • 合計:約363億円

約105億円分は、会社が受注確度の高い後続フェーズとして見込んでいる金額を含みます。

したがって、363億円すべてを完全な契約済み売上として見るのは危険です。

一方で、収益性の改善につながる変化もあります。

顧客が提案費用を全額負担する「全額拠出案件」の比率は、受注残高ベースで94%まで上昇。

平均案件期間も短縮しており、受注残を以前より早くプロジェクト収益へ変えることを目指しています。

これは、アストロスケールが「自社資金を使って実証する会社」から、「顧客のお金でサービスを開発・提供する会社」へ移ろうとしている動きです。

フランスでの新規契約も獲得

2026年9月には、フランス子会社が初めて軌道上ミッションを受注しました。

契約先はフランスの宇宙企業Exotrailで、契約額は1,320万ユーロ。

Eutelsat OneWebの人工衛星へ接近・ドッキングし、軌道から離脱させる実証ミッションへ参加します。実施時期は2029年から2030年の予定です。

ここでもアストロスケールは、衛星通信会社から直接すべてを請け負うのではなく、Exotrailの下で接近・近傍運用技術を提供します。

この契約は売上規模だけでなく、欧州での実績を作るという点で重要です。

アストロスケールはいつ黒字化する?

残念ながら、直近で黒字化する計画ではありません。

会社が示した2027年4月期の予想は、

  • プロジェクト収益:125億~170億円
  • 売上収益:70億~90億円
  • 営業損失:90億~99億円

となっています。

売上は成長する見込みですが、複数の衛星開発と実証ミッションを同時に進めているため、研究開発費や人件費などが重く残ります。

黒字化するために必要なのは、単純な受注件数の増加だけではありません。

顧客が費用を負担する案件を増やすこと
開発した技術を複数案件で使い回すこと
単発の実証から継続サービスへ移ること

この3つが重要です。

特に、民間衛星の寿命延長サービスが継続収入へ育つかが、大きな分岐点になりそうです。

財務面は大丈夫なの?

赤字企業を見るときは、保有する現金も重要です。

アストロスケールは2026年6月に306億円の資金調達を実施し、2026年7月末の現金及び現金同等物は約349億円まで増えました。

当面の開発資金は確保された形です。

ただし、フリーキャッシュフローは今もマイナスで、今回の資金調達には転換社債も含まれています。

将来、転換社債が株式へ転換されれば、1株当たり価値が薄まる可能性があります。

「現金が増えたから安心」で終わらず、

  • 四半期ごとの現金減少
  • 新たな資金調達
  • 転換社債による希薄化
  • 打ち上げ延期による追加費用

は継続して確認したいポイントです。

期待だけでなく、失注リスクもある

アストロスケールは、英国宇宙庁の宇宙ゴミ除去プロジェクト「COSMIC」の初期段階を進めていました。

しかし、2026年8月に行われたフェーズ3の入札では、別の事業者が選ばれました。

会社は、当期の業績予想には織り込んでいなかったため、通期予想への影響はないと説明しています。

それでも、

技術実証に成功すれば、次の大型契約も自動的に取れるわけではない

ことを示す出来事です。

宇宙ゴミ市場が拡大しても、アストロスケールがすべての案件を獲得できるわけではありません。

各国企業との競争、入札価格、政治的な判断、打ち上げの遅延など、宇宙企業特有のリスクがあります。

まろぴーが注目する3つのポイント

アストロスケールを見るなら、株価だけでなく次の3点を追いかけたいと思います。

1.ミッションが予定どおり打ち上がるか

宇宙企業は、ひとつの打ち上げ延期が売上計上の時期にも影響します。

APS-R、ELSA-M、ADRAS-J2などの進捗が重要です。

2.受注残がプロジェクト収益へ変わるか

受注残が増えても、売上への転換が遅ければ赤字期間は長くなります。

プロジェクト収益と平均案件期間を確認します。

3.民間の継続収入が育つか

政府案件だけでなく、民間衛星の寿命延長や軌道離脱が定期的な収入になれば、事業の見え方が変わります。

🐥「宇宙ゴミが増えれば、それだけで大儲けじゃないんだね」

まろぴー「市場が大きくなることと、会社が利益を出せることは別。ここ、とっても大事!」

まとめ:SpaceXは市場を広げる存在。でも利益は別問題

SpaceXとアストロスケールは、現在のところ直接の競合ではありません。

SpaceXはロケットや人工衛星によって宇宙利用を広げる会社。

アストロスケールは、その宇宙空間を安全に使い続けるための軌道上サービスを提供する会社です。

両社に大きな資本・業務提携が確認されているわけではありませんが、宇宙へ運ばれる人工衛星が増えるほど、点検・延命・除去の必要性は高まりやすくなります。

その意味では、

SpaceXをはじめとする宇宙産業の成長は、アストロスケールの市場を間接的に広げる可能性がある

と考えられます。

一方、アストロスケールは現在も大幅な赤字です。

受注残や将来の案件候補は豊富でも、それを売上と利益へ変えられるかは、これからのミッション成功と事業化にかかっています。

宇宙ゴミ除去という夢のあるテーマだけで判断するのではなく、

  • 打ち上げと実証の成功
  • 受注残から売上への転換
  • 顧客負担案件の増加
  • 民間の継続収入
  • 現金と資金調達
  • 競合との入札結果

を確認していきたい企業です。

🐥「SpaceXが宇宙への道を作って、アストロスケールが安全を守る!」

まろぴー「その安全がお金になる仕組みを作れるか。そこが投資では一番の注目ポイントだね!」

🐥「受注残が363億円もあるのに、どうしてまだ赤字なの?」

まろぴー「受注してから売上になるまで長いのが宇宙ビジネス。黒字化には、もう少し条件があるんだよ!」

受注残363億円の内訳や約349億円の現金、転換社債による希薄化リスク、黒字化に必要な5つの条件はこちらで詳しく分析しています。

→ アストロスケールはいつ黒字化する?10年後も「夢枠」なのか

※本記事は公開資料をもとに事業内容を整理したもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績予想や受注見込みには不確実性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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