若者がディズニーに行けなくなってる?オリエンタルランド「高単価化」の先にある20年後のリスク

企業深掘

ディズニーのチケット、今は大人1人で最高10,900円。

「高くなったなあ」と感じる一方で、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(4661、以下OLC)の売上高は過去最高を更新しています。

ならば、高単価化は成功なのでしょうか?

現在の売上を伸ばす戦略としては、成功している。 まろぴーはそう考えます。ただ、投資先として調べるうちに、もう一つ気になる問いが出てきました。

夢の国が「たまに行く高級レジャー」になったとき、子どもの頃のディズニー体験は、次の世代へ受け継がれていくのか?

今回は「若者のディズニー離れ」と決めつけず、OLCの業績、来園者数、年齢構成、海外ゲスト、チケット価格を確認。そのうえで、サンリオとの違いや2028年度に予定されるディズニークルーズまで見ていきます🏰

※原則として2026年3月期までの実績と、2027年3月期の会社計画を使用。株価指標は2026年9月18日終値時点です。「年度」は4月から翌年3月までを指します。

OLCの業績:売上高は過去最高。でも利益は別の動き

まずは足元の業績です。

決算期売上高営業利益当期純利益
2024年3月期6,185億円1,654億円1,202億円
2025年3月期6,794億円1,721億円1,242億円
2026年3月期7,045億円1,684億円1,219億円

※億円単位に四捨五入。(www.olc.co.jp)

2026年3月期の売上高は過去最高でした。来園者数は前期とほぼ同じでしたが、チケット関連、商品、飲食のゲスト1人当たり収入がいずれも増加しています。一方、営業利益は人件費や諸経費などの増加で減少しました。(www.olc.co.jp)

さらに2027年3月期の会社計画では、入園者数を2,753万人から2,800万人、ゲスト1人当たり売上高を18,403円から18,712円へ伸ばす見込みです。売上高も約7,045億円から約7,243億円へ増える一方、営業利益は約1,684億円から約1,608億円へ、約4.5%の減益を見込んでいます。(株式会社オリエンタルランド)

ここがこの記事の出発点です。

客単価が上がれば、必ず利益が伸びるわけではありません。 パークの魅力を保つための人材、運営、新施設への投資にもお金がかかります。OLCの高単価化は成果を出しましたが、「値上げすればずっと増益」という単純な段階ではなさそうです。

なぜOLCは高単価化を進めたのか

値上げだけを見ると、ゲストから多くのお金を取るための戦略に見えるかもしれません。でもOLC側には、きちんとした経営上の理由があります。

パークは、来園者を無制限に増やせません。混みすぎれば、アトラクションの待ち時間が長くなり、食事や買い物もしづらくなります。満足度が下がれば、次回の来園にも影響しかねません。

OLCは2023年10月から1デーパスポートの価格帯を広げ、当時の大人料金を7,900円から10,900円の6段階にしました。会社資料では、価格差を使って来園日を分散させる「平準化」と、体験価値の向上を狙いとして説明しています。(olc.co.jp)

つまり、繁忙日は高く、比較的余裕のある日には低い価格を設ける。その結果、混雑を和らげながら売上も確保する考え方です。

まろぴーは、高単価化それ自体を悪い戦略とは思いません。 限られたパークの収容力の中で、体験の質と収益を両立させようとするのは合理的です。

ただし、値段が上がるほど、来園できる人や来園頻度への影響も気になります。この二つを同時に見る必要があります。

1人当たり売上高は、2016年度から約59%上昇

年度ゲスト1人当たり売上高
2016年度11,594円
2019年度11,606円
2022年度15,748円
2023年度16,644円
2024年度17,833円
2025年度18,403円
2026年度・会社計画18,712円

2016年度から2025年度までに約**59%**上昇しました。この指標にはチケット関連だけでなく、パーク内の商品・飲食の売上も含まれます。ホテル代を含む「旅行の総額」ではありません。(www.olc.co.jp)

パークに来た人がより多く使ってくれる。これはOLCにとって大きな強みです。

一方で、2027年3月期には客単価の上昇を計画しながら営業減益を見込んでいます。これから投資家が見るべきなのは、客単価の伸びだけでなく、それを利益の成長につなげられるかでしょう。

入園者数は約2,750万人で横ばい

年度東京ディズニーランド・シーの年間入園者数
2018年度約3,256万人
2022年度2,209万人
2023年度2,751万人
2024年度2,756万人
2025年度2,753万人
2026年度・会社計画2,800万人

コロナ禍から来園者は大きく戻りました。ただ、2023年度から2025年度までは約2,750万人で横ばい。2018年度の約3,256万人には届いていません。(www.olc.co.jp)

これを直ちに「人気低下」と読むことはできません。OLCは混雑と体験価値を考えながら運営してきましたし、売上は実際に伸びています。

それでも、今後も人数より単価の伸びに頼るなら、その価格を払ってでも行きたいと思う人を、次の世代にも増やせるかが重要になります。

年齢構成:若者と子どもの「比率」は下がっている

年度18~39歳40歳以上12~17歳4~11歳
2019年度51.9%21.5%11.6%15.0%
2022年度44.9%29.0%12.5%13.6%
2023年度41.0%33.2%12.4%13.4%
2024年度41.2%33.9%11.8%13.1%
2025年度40.3%35.3%11.5%12.9%

2019年度から2025年度にかけて、18~39歳の比率は11.6ポイント低下。40歳以上は13.8ポイント上昇しました。4~11歳の比率も2.1ポイント下がっています。(www.olc.co.jp)

ここは慎重に読みたいところです。この表は来園者を対象とするサンプリング調査の構成比で、年齢別の来園実人数ではありません。また、2023年度・2024年度から集計方法が変更されています。「18~39歳」も幅広い年齢を含む区分です。

したがって、この表だけで「チケットが高くなったせいで若者が来なくなった」とは言えません。

それでも、来園者の年齢構成が変化しているのは事実。長期の顧客づくりを考えるなら、見過ごしたくない数字です。

海外ゲストは増加。でも国内ゲストが約85%を占める

年度海外ゲスト数来園者に占める比率
2015年度約181万人6.0%
2019年度約290万人10.0%
2023年度約349万人12.7%
2024年度約421万人15.3%
2025年度約416万人15.1%

海外ゲストはコロナ禍前を上回っています。年齢構成の変化を考える際にも、海外からの来園が増えたことを無視できません。(www.olc.co.jp)

一方、2025年度の海外ゲスト比率が15.1%ということは、国内ゲストは約84.9%。OLCにとって、海外需要は重要な成長機会ですが、現在の来園者の大部分を占める国内市場の次世代顧客も大切です。

ここで知りたいのは、「海外客の増加で国内の若い世代の減少を補っているのか」です。ただし、公表されている年代別・地域別の構成比だけでは、そこまで切り分けられません。今後、国内ゲストの年齢別動向が分かる資料が出れば、ぜひ確認したいところです。

家族4人のディズニー費用を試算してみる

チケット価格の長期推移を見ると、大人の1デーパスポートは1983年度に3,900円、2015年度に6,900円、2019年度に7,500円でした。現在は変動価格制で、公式サイトの掲載価格は大人8,900円から。日付によっては10,900円です。(www.olc.co.jp)

では、大人2人と4~11歳の子ども2人で行くと、どれくらいかかるのでしょうか。

費用最低表示価格による試算
大人2人のチケット8,900円×2=17,800円
小人2人のチケット5,300円×2=10,600円
チケット4人分28,400円

これは各券種の最低表示価格を足した参考例です。同じ入園日に全員がこの価格で購入できることを保証する数字ではありません。実際には希望日を指定して確認する必要があります。(www.tokyodisneyresort.jp)

さらに交通費、食事代、お土産代が加わります。遠方なら宿泊費も必要です。パーク内での支出額には個人差がありますが、「4人で行くと大きな出費」という感覚は理解できます。

ここから「家族が行かなくなった」とは言えません。ただ、子どもが初めてパークを体験する機会に、費用がどう影響するかは、長期の顧客づくりを考えるうえで重要です。

OLC自身が語っていた「幼少期の来園経験」

このテーマを考えるうえで、まろぴーが特に注目したのはOLCの過去の資料です。

OLCは2013年のアニュアルレポートで、幼少期に来園することは長期的に重要で、成長後や家族になってからの再来園に結びつきやすいという考えを示していました。(olc.co.jp)

つまり、

子どもの頃に来園する → 成長して再び訪れる → 次の世代にも来園の機会が生まれる

という循環を、OLC自身が事業上の大切な視点として捉えていたわけです。

もちろん、これは「子どもの来園比率が数ポイント下がれば、20年後の売上が何%減る」と証明するデータではありません。世代循環が今も同じ強さで働いているかも、公表資料だけでは分かりません。

でも、会社がかつて長期的に重要だと説明した幼少期の体験について、現在の価格戦略のもとでも十分な入口を確保できているか。この問いは、単なる感想では終わらないと思います。

サンリオとの違い:IPに触れる場所を増やしている

サンリオとの比較も面白いです。ただし、事業の形は違います。

OLCの中核は、東京ディズニーリゾートという場所で提供する体験。一方、サンリオはキャラクターを商品、企業とのライセンス契約、ゲーム、映像、教育など、さまざまな場所に展開しています。

視点OLCのパーク事業サンリオ
強み現地でしか味わえない大きな体験日常の多様な場所でIPに触れられる
主な収益機会入園、飲食、商品、ホテルなど商品、ライセンス、ゲーム、施設など
子どもとの入口来園するにはチケット・移動が必要商品や動画など複数の接点がある
投資家が見る点体験価値と来園機会の両立接点の拡大を継続的な収益に変えられるか

サンリオは2026年にゲーム事業への取り組みを進め、未就学児と家族に向けた動画チャンネルも開設しました。また、2025年に発行した統合報告書を子ども向けに解説する動画も制作しています。後者は2026年制作ではなく、2025年の取り組みです。(corporate.sanrio.co.jp)

サンリオが進めているのは、今いるファンに商品を売るだけでなく、IPと出会う機会そのものを増やすことです。

詳しくは、まろぴー株ラボの関連記事「サンリオはなぜ強い?ポケモンに並ぶ日本発IP企業の稼ぐ仕組みを深掘り」でも、ライセンス・ゲーム・海外展開を整理しています。

ただし、「サンリオは子ども向け、ディズニーは大人向け」と単純化はできません。ディズニーの作品やキャラクターにも、パークの外で触れる機会がたくさんあります。また、そのIP展開のすべてがOLCの事業ではありません。

OLCについての問いは、ディズニーIPを知っている人が、東京ディズニーリゾートを実際に体験する機会を持てるか。 そこにあります。

20~30年後のリスクは「今の売上」からは見えにくい

ここまでの数字を並べると、二つの見方ができます。

高単価戦略を支持する見方はこうです。パークの収容力には限界があります。価格差をつけて混雑をならし、体験の質を高めながら客単価を伸ばす。売上高は過去最高で、海外からの需要もあります。OLCは2027年の新施設にも投資しており、今後の集客策も進めています。(olc.co.jp)

慎重に見る立場では、こう考えます。18~39歳と子どもの来園比率は長期で低下しました。国内ゲストが現在も約85%を占める以上、国内の次世代がパークを訪れる機会は重要です。しかも会社自身が、幼少期の来園経験と将来の再来園のつながりを説明していました。(www.olc.co.jp)

現時点で、どちらか一方に決めることはできません。子ども時代の来園経験が将来の売上にどの程度効くのか、公開された数字では測れないからです。

だからこそ、まろぴーはここを長期の注目点にしたい。

今のゲストから得る売上を増やしながら、初めて来る子どもや若い人の入口も保てているか。

この両立ができれば、高単価化は強い成長戦略になります。できなければ、影響が見えるのは数年後ではなく、20~30年後かもしれません。

ディズニークルーズは、この課題への答えになる?

OLCは2028年度に、日本を拠点とするディズニークルーズの就航を予定しています。

項目会社計画・想定
船体投資2,900億円
予備費400億円
乗客定員約4,000人
主な航海日数2~4泊
計画上の価格帯1人1航海あたり10万~30万円台まで
就航数年後の想定年間乗客約40万人、売上高約1,000億円
通年稼働後2029年度から黒字を想定

価格帯は、会社が示した最も多い客室タイプについての計画値。実際の販売価格が確定したわけではありません。OLCはファミリー、若者層、訪日外国人旅行客をターゲットに挙げています。(www.olc.co.jp)

まろぴーは、クルーズを単純に「苦肉の策」とは見ません。OLCは、舞浜の土地の制約を受けにくく、天候にも左右されにくい事業として説明しています。パークとホテル以外に新しい収益の柱をつくる狙いは明確です。(www.olc.co.jp)

ただし、クルーズの成功と、子どもが初めてディズニーの世界を現地で体験しやすいかは別の話です。計画上の価格帯を考えると、クルーズは幅広い層への手頃な入口というより、特別な体験を求めるゲストに向けた事業になりそうです。これは計画からの推論であり、実際の客層は就航後に確認する必要があります。

投資家としては、約3,300億円の投資に対して、乗客数、売上、利益が計画どおり立ち上がるかを追いたいところです。会社は年間約200億円規模の減価償却費も想定しています。(www.olc.co.jp)

株価・PER:高い成長期待に応えられるか

2026年9月18日のOLC株価は3,035円。同日時点の表示PERは43.73倍、PBRは4.41倍でした。これはその日の株価と指標であり、以後の値動きや業績予想の変更で変わります。(finance.yahoo.co.jp)

PERが40倍を超える銘柄を見るなら、「人気企業だから」で判断はできません。今後、どんな利益成長がその評価を支えるのかを考える必要があります。

OLCには、パークの新施設、ホテル、海外ゲスト、そしてクルーズという成長材料があります。一方、2027年3月期は増収・営業減益予想です。目先では新しい投資や運営コストが先行し、その後の収益拡大につながるかが問われます。(株式会社オリエンタルランド)

まろぴーがPERと一緒に見たいのは、次の数字です。

  • 入園者数と客単価:どちらも会社計画に沿って伸びるか
  • 営業利益:売上の成長が、コスト増を上回るか
  • 年齢構成:若い世代と子どもの比率に、どんな変化が出るか
  • クルーズ:開業後の乗客数と利益が計画に届くか

まろぴーの結論:高単価化は成功。だからこそ「次のファン」を見たい

OLCの高単価戦略には合理性があります。混雑をならして体験価値を守り、来園者数が横ばいでも売上高を伸ばしました。現在の収益づくりという点で、結果を出している戦略です。

同時に、来園者に占める18~39歳や子どもの比率は、長期で低下しています。この変化をすべてチケット価格のせいにはできません。それでも、OLC自身がかつて幼少期の来園経験を長期的に重要だと説明していたことを思うと、気になる数字です。

夢の国が「たまに行く高級レジャー」として成功した先で、初めて夢の国を訪れる子どもたちも育てられるか。

それが、まろぴーがこの会社を20~30年の視点で見たい理由です。現在の売上と、未来のファン。OLCが両方を伸ばせるか、これからも数字で追っていきます✨

参考資料

※本記事は公開資料をもとにした企業分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。会社計画や価格は変更される可能性があります。

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